東日本大震災から8年経っても、思い出すたび感謝する気持ちが沸き上がる経験

 

2011年3月11日。

 

この日は、東北を中心に一生忘れることのできない災害があった日。

甚大な災害で不安と恐怖の中、その日の心の支えになってくれたひとりの男性がいた。

声をかけてくれたこの男性に、震災から8年が経った今でも、感謝の気持ちが薄れることはない。

 

あの日声をかけてくれて、一緒にいてくれてありがとう。

 

 

何気ない日常に突然おとずれた衝撃

 

当時、私は海からほど近いショッピングモールで勤めていたけれど、震災当日はたまたま休みでネットカフェにいた。

 

その瞬間は、ちょうど次に読む本を手に個室のドアを開けた時に起こった。

 

グラッと揺れ、

「あっ地震だ」

とすぐにわかったけれど、普段の地震のようにすぐにおさまると思っていた。

 

しかしその直後、めまいかと勘違いしそうなほどの大きな揺れが襲ってきて、「ヤバい!」と思い急いで個室の机の下に潜り込んだ。

 

そこからは、まるで船に揺られているような大きな横揺れがしばらく続く。

 

その揺れのあまりの大きさに、初めて

「あ、死ぬな」

と心の底から思った。

 

机の下で四つん這いで踏ん張ってもよろめいてしまうほどの激しい揺れ。

飲み物が入った紙コップが落ちて床を濡らした。

天井が落ちて下敷きになるかもしれないと本気で覚悟した。

 

あまりの恐怖と驚きに、床についた手を強く握りしめた。

 

「おねがい、おねがいだから早くおさまってください」

そう祈り続けつつ、携帯を手に取り、誰でもいいから声が聴きたくて手当たり次第に電話をかけた。

しかし親兄弟、友達、職場、誰も応答がない。

しかたなく電話はあきらめてとにかくおさまるのを待った。

今考えれば、あんな状況で電話に出ようと思う人いないよな、と思う。

 

声をかけてくれたひとりの男性

 

揺れがおさまってきて、ようやく立てる状態になったので恐る恐る個室のドアを開けた。

 

その目に映ったのは

 

本棚からほとんど落ちてしまった本で埋め尽くされた床。

あるべき場所から大きくずれ動いてしまっているマッサージチェア。

大きくヒビが入った壁。

電気が切れ薄暗い店内。

外にはビルの目の前の広場に集まってきているたくさんの人。

 

一瞬にして変わり果ててしまったこの状況に頭が追いつかず、しばらく呆然としていると、ひとりの男性に

「大丈夫ですか?」

と、声をかけられた。

 

このひと声にどれだけ安心したことか、私は今でも鮮明に覚えている。

 

声をかけてくれたおかげで津波の被害を逃れることができた

 

男性とは偶然にも地元が近かった。

もし声をかけられなかったとしても、なんとしてでも家に帰るつもりだったけれど、声をかけてくれて、帰宅するまで行動を共にすることができたおかげで、私は津波の惨状を目の当たりにしなくてすんだといっても過言じゃなかった。

 

運良く乗れたタクシーの中で津波が襲ってきたことを知る

 

地震直後に、それまで晴れていた空の雲行きが怪しくなり、突然強風と大雪が襲い始めた。

その天気の急変が、更なる天災が起こる前兆のように感じ、より不安を煽った。

 

交通機関は全て機能していないため、吹雪がおさまってきたタイミングで、2人で歩いてそれぞれの家まで帰ろうと決めた。

 

街中を抜け、大通りに出るとたくさんの車で大渋滞になっていた。

そんな中、幸いにも空車タクシーを見つけたので、急いで駆け寄り乗せてくれるように頼んだ。

行き先を告げると、タクシードライバーから

「今、その辺りは道路が冠水して通れなくなってしまったから、別の道を通っていきますね。」

と言われた。

冠水?と疑問で頭がいっぱいになる。

降っていたのは雪なのに?

するとドライバーさんが、

「(今から帰ろうとしていた辺りは)津波がきてるんですよ。」

という言葉に続け、ワンセグで津波の状況を放映するニュースの映像を見せてきた。

 

画面に映し出された光景は、本当に、今、自分たちが住んでいる地域で起こっていることなのか?

あまりにも衝撃的な映像に、どう受け止めて、なにを言ったらいいのかわからなくなった。

 

もしも自分一人で家に帰ろうとしていたら、空車タクシーを見つけられなかったかもしれなくて、本来帰るルートを歩いて帰る途中で、津波の惨状を目の当たりにしていたかもしれない。

そう思うと、声をかけてくれた男性への感謝の思いが大きくなるばかりだった。

 

車で自宅まで送ってくれた

 

車はあまりの渋滞で、亀の歩みほどの遅さだった。

歩いて帰ろうとしている人たちにどんどん追い抜かされる。

街中を出るときは明るかった空も、戻る途中ですっかり暗くなっていた。

通常なら車で3~40分で帰れる距離だった。

 

すると、男性から私に、また救いの言葉が。

「いったん自分の家に寄っていってください。車で送ります。」

 

その言葉に、すごくありがたい気持ちと申し訳ないと思う気持ちが同時に沸き上がったけれど、ありがたい気持ちのほうが大きかった。

なぜかといえば、辺りはほとんど停電して真っ暗だったから。

素直に男性の厚意に甘えて、自宅まで送ってもらうことにした。

おかげで、地震発生から約6時間後に無事家に帰ることができた。

 

”ひと声をかける”ことの大切さを知った経験

 

未曽有の災害が起き、帰宅が困難な方々もいた中で私は本当に運がよかったのだと思う。

また、“ひと声をかける”ということが、相手にどれだけ安心感を与えるかということを身をもって感じた。

声をかけたところで、自分がその人のためにどれだけ力になれるかわからないけれど、声をかけられた方は、その“気遣い”だけでもずい分救われると思う。

 

この先も、この男性のことをずっと忘れず、感謝し続けていこうと思う。